VRT(可変施肥技術)で肥料代を削減する

VRT(可変施肥技術)で肥料代を削減する


導入

「今年も野菜作りの季節が来た!まずは肥料をたっぷりまいて、大きく育てるぞ!」 そう意気込んで、畑全体に「均一に」肥料をまいていませんか?

実は、そのやり方、非常にもったいないかもしれません。 畑の土の状態は、場所によって驚くほど違います。水はけが良い場所、悪い場所、前作の肥料が残っている場所、すっかり痩せてしまった場所…。 それなのに、全部同じように肥料をあげるのは、お腹がいっぱいの人に無理やりご飯を食べさせるようなものです。

肥料のやりすぎ(過剰施肥)は、単にお金の無駄遣いになるだけではありません。 野菜が軟弱に育ってアブラムシなどの害虫がつきやすくなったり、えぐみが増して味が落ちたりと、百害あって一利なしです。

そこで今、プロの農業現場で急速に普及しているのが 「VRT(可変施肥技術)」 です。 「必要な場所に、必要な分だけ」肥料をまくこの技術。 今回は、この最先端テクノロジーの仕組みと、家庭菜園でも真似できる「賢い肥料のやり方」について解説します。

ℹ️ この記事の対象読者
  • 肥料代を少しでも節約したい方
  • 野菜の生育ムラ(大きい・小さい)に悩んでいる方
  • 最新のスマート農業の仕組みを知りたい方

VRT(可変施肥技術)とは?

VRTは Variable Rate Technology の略で、日本語では「可変施肥(かへんせひ)技術」と呼ばれます。 簡単に言うと、「畑の場所ごとに、肥料の量を自動で変える技術」のことです。

これまでの農業では、経験と勘を頼りに、広い畑にトラクターで一律に肥料をまくのが一般的でした。 しかし、GPSやセンサー技術の進化により、畑の中の「ムラ」を正確に把握できるようになったことで、農業は「勘」から「データ」へと進化しました。

VRTを使えば、機械が自動で判断してくれます。

  • 「ここは栄養が足りないから多めにまこう」
  • 「ここは十分だから少なめに(あるいはゼロに)しよう」

従来農法 vs VRT:何が違う?

一律にまく場合と、VRTを使う場合で何が変わるのか、比較してみましょう。

項目 従来の一律施肥 VRT(可変施肥)
肥料の使用量 無駄が多い(過剰になりがち) 必要最小限(コスト削減)
作物の生育 場所によってバラつきが出る 畑全体で均一に揃う
環境への影響 余分な肥料が川へ流出するリスク大 流出リスクを最小限に抑える
必要なもの 経験と勘 データ(マップ)と専用機械

なぜVRTが必要なの? 3つのメリット

1. 肥料代の大幅な削減(コストダウン)

肥料価格は世界情勢の影響を受けて高騰し続けています。 VRTを導入した農家の中には、肥料の使用量を10%〜30%も削減できたという事例もあります。これは経営にとって非常に大きなインパクトです。

2. 生育のバラつきをなくす(品質向上・収量アップ)

栄養不足の場所は補い、過多の場所は抑えることで、畑全体の野菜の大きさが揃います。 収穫作業も効率化され、「あっちは大きいのに、こっちは小さい…」という悩みが解消されます。特に、収穫を一斉に行う小麦や大豆などの大規模農業では効果絶大です。

3. 環境を守る(SDGs)

土に残った余分な肥料成分(窒素など)は、雨で流れて地下水や川を汚染する原因になります(富栄養化)。 必要な分だけまくことは、地域の環境を守り、持続可能な農業を実現するために不可欠なアクションなのです。

どうやって「可変」にするの? 仕組みを解説

VRTを実現するには、主に2つのステップがあります。

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ステップ1:畑の健康診断(センシング)

まずは現状把握です。ドローンや衛星からの画像(リモートセンシング)で作物の色を見たり、トラクターに取り付けた土壌センサーで土の肥沃度を測定したりして、畑の「施肥マップ(処方箋)」を作ります。

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ステップ2:マップに基づいて散布(コントロール)

作成したマップデータを、肥料をまく機械(ブロードキャスターなど)に読み込ませます。機械はGPSで自分の位置を把握し、マップの指示通りに「ここは多め」「ここは少なめ」と、秒単位で散布量を自動調整しながら走行します。

家庭菜園でできる「人力VRT」

「すごい技術だけど、高価な機械なんて買えないし…」 そう思うかもしれませんが、「場所によって肥料を変える」という考え方そのものは、家庭菜園でも今日から取り入れられます。 むしろ、一本一本の野菜と向き合える家庭菜園こそ、究極のVRTができる場所です。

1. 「観察」で人力VRT

一番高性能なセンサーは、あなたの「目」です。 漫然と全体に追肥をするのはやめましょう。

  • 葉色が薄い・黄色っぽい: 窒素が足りていないサインです。そこだけ少し多めに追肥しましょう。
  • 葉色が濃すぎる・丸まっている: 肥料過多のサインです。追肥はストップしましょう。
  • 成長が遅れている: 根が傷んでいる可能性もありますが、肥料不足ならスポット的に液体肥料をあげるのが効果的です。

2. 簡易キットで土壌診断

ホームセンターで売っている「土壌酸度計」や「ECメーター(電気伝導度計)」を活用しましょう。 数千円で買えるスティックタイプのもので十分です。

  • 「この畝(うね)は酸性が強いから、石灰を少し多めにまこう」
  • 「ここは前作の肥料が残っている(EC値が高い)から、元肥は半分にしよう」

このように、「測ってから、決める」。 これだけで、あなたはもう立派なスマートファーマーです。

まとめ

VRT(可変施肥技術)は、データを活用して無駄をなくす、最先端の農業技術です。 「一律ではなく、個別に合わせる」。この視点を持つだけで、野菜作りはもっと上手になります。

肥料は「やればやるほど育つ」ものではありません。「足るを知る」ことが、健康な野菜を育てる秘訣です。 次の週末は、肥料袋を開ける前に、まずはじっくりと畑の野菜たちを観察してみませんか? 必要な場所に必要なだけ。それが、野菜にもお財布にも、そして地球にも優しい栽培の第一歩です。

💡 今日のアクション

ホームセンターに行ったら、肥料売り場の近くにある「土壌測定器」コーナーを覗いてみてください。電池不要で酸度(pH)を測れるシンプルなものなら、意外と安く(数千円で)手に入りますよ!