「見回り」だけで一日が終わっていませんか?
「離れた場所にあるビニールハウスの温度が心配で、日に何度も往復している」 「水田の水位を確認するために、早朝から軽トラを走らせている」
農業は、作物を育てる作業と同じくらい、環境をチェックする「見回り」に時間を取られますよね。 「スマホで確認できればいいのに」と思っても、広い農場ではWi-Fiが届かないし、携帯電話の回線を使う監視カメラなどは月額料金が高くて手が出ない…。
そんな農業現場特有の悩みを解決する、 「安くて、遠くまで届く」 通信技術があるのをご存知でしょうか? それが 「LPWA(Low Power Wide Area)」 です。
今回は、派手さはないけれど、農家の負担を劇的に減らしてくれるこの技術について、具体的な活用事例を交えて解説します。
- 離れた場所に畑やハウスがあり、移動時間を減らしたい方
- 電源がない場所でデータを計測したい方
- なるべくコストをかけずにIoT(モノのインターネット)を導入したい方
LPWAって何?Wi-Fiとどう違うの?
LPWAは、その名の通り 「低消費電力(Low Power)」 で 「広域(Wide Area)」 をカバーする無線通信技術の総称です。
| 項目 | Wi-Fi | 4G / 5G | LPWA |
|---|---|---|---|
| 通信距離 | 数十メートル(家の中など) | 数キロ〜全国 | 数キロ〜数十キロ |
| 通信速度 | 超高速(動画も余裕) | 高速 | 超低速(数字や文字だけ) |
| 消費電力 | 大きい(毎日充電が必要) | 大きい | 極小(乾電池で長期間稼働) |
| コスト | 無料(回線契約が必要) | 高い(月数千円〜) | 安い(月数十円〜数百円) |
画像や動画を送るのには向きませんが、 「温度は25℃です」「水位が下がりました」といった小さなデータを送るには最強の技術 なのです。 なにより、電源がない畑でも乾電池だけで長期間(環境によりますが1シーズン〜数年)稼働する のが、農業にとって最大のメリットです。
農業での活用事例 3選
では、実際にどのような場面で使われているのでしょうか?
1. ビニールハウスの環境モニタリング
最もポピュラーな使い方です。ハウス内に温度・湿度・CO2濃度を測るセンサーを設置します。
- メリット: スマホでいつでもハウス内の状況が見られます。「温度が30℃を超えたらLINEに通知」といった設定も可能。
- 効果: 異常があった時だけ駆けつければ良いので、無駄な移動がなくなります。蓄積されたデータを見返せば、「去年のこの時期はどうだったかな?」と栽培計画にも役立ちます。
2. 水田の水位・水温管理
水稲栽培において、水管理は品質を左右する重要な作業ですが、枚数が多いと見回るだけで重労働です。
- メリット: 水位センサーを田んぼに挿しておくだけで、水位の変化をグラフで確認できます。
- 効果: 特に水が必要な時期や、逆に水を抜く時期の管理が正確になります。車で各田んぼを回るガソリン代も節約できます。
3. 獣害対策(罠の監視)
イノシシやシカの罠を山奥に仕掛けている場合、毎日見に行くのは大変な労力です。
- メリット: 罠が作動して扉が閉まった時だけ、信号を送るセンサーを取り付けます。
- 効果: 「空振り」の見回りがゼロになります。捕獲した時だけ行けば良いので、効率的に害虫駆除ができます。
導入は難しい?
「専門的な知識が必要なんでしょ?」と思うかもしれませんが、最近はとても簡単になっています。
通信方式とエリアを確認する
LPWAには、携帯会社などが提供する「Sigfox」「ELTRES」や、自分で基地局を立てられる「LoRaWAN(ローラワン)」などがあります。自分の畑がエリア内か確認するか、圏外ならLoRaWANを検討しましょう。
機器を購入・設置
センサーと通信機が一体になった製品が多く販売されています。難しい配線工事は不要で、杭のように地面に刺したり、結束バンドで柱に縛るだけでOKなものがほとんどです。
アプリで確認
専用のアプリやWebサイトにログインすれば、すぐにデータが見られます。月額利用料も、機器代に含まれている場合や、年払いで数千円程度と安価です。
まとめ
LPWAは、自動運転トラクターのような派手さはありません。 しかし、毎日の「ちょっとした確認作業」や「移動時間」を削減してくれる、 縁の下の力持ち のような技術です。
「あそこのハウス、温度大丈夫かな…」と不安になりながら夕飯を食べる生活から卒業しませんか? まずは一番負担に感じている場所を一箇所だけ、センサーに任せてみることから始めてみましょう。 空いた時間で、もっと生産的な作業ができるようになりますよ。
「農業 環境モニタリング LPWA」などで検索すると、月額無料(機器代のみ)のサービスや、自治体の補助金対象になっている製品も見つかります。ぜひチェックしてみてください!